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外国人労働者の採用における注意点|文化的理解や法的要件を踏まえた採用戦略

  • 投稿カテゴリー:お役立ち情報

日本では少子高齢化が進み、労働力人口の減少が経営における深刻な課題となっています。
そんな中、外国人労働者を採用・活用することで多様な人材を確保し、企業競争力を高める動きが加速しています。
実際、厚生労働省が公表した「『外国人雇用状況』の届出状況(令和6年10月末時点)」によれば、
外国人労働者数は2,302,587人に上り、過去最多を更新しています。
(参考:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ
しかしながら、実務レベルでは文化的な違いや法的・手続き上の要件を軽視すると、採用・定着において思わぬリスクも存在します。

本記事では、外国人労働者の採用を検討・実施する企業が押さえておくべき「文化的理解」「法的要件」「採用戦略」を整理し、実践につながる形でお伝えします。

 

目次

1.外国人労働者の採用における現状と課題
2.文化的理解を深めるためのポイント
3.法的要件を遵守するための基本知識
4.外国人労働者採用の成功につながる3つの戦略
5.よくある質問(FAQ):外国人労働者採用における疑問と対応
6.まとめ

 

1.外国人労働者の採用における現状と課題


現状:増加し続ける外国人労働者

令和6年10月末時点における外国人労働者数は 2,302,587人で、前年と比べると253,912人増加しています(増加率12.4%)。
また、外国人を雇用する事業所数は 342,087所 で、前年から23,312所の増加とされています(増加率7.3%)。
国籍別では、ベトナムが570,708人(全体の約24.8%)、中国408,805人(17.8%)、フィリピン245,565人(10.7%)という順位でした。
(参考:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ

これらの数字は、外国人労働力の活用が企業にとって現実的かつ重要な選択肢になっていることを示しています。

 

課題:採用と定着の難しさ

・文化的なギャップ
日本企業の職場文化(報告・連絡・相談、上下関係の捉え方、時間・礼儀)と、
外国人の母国文化との間にミスマッチが起きることがあります。

・法的・手続き上の複雑さ
適切な在留資格の確認、就労ビザの申請・更新、雇用契約の明示、労働条件の適正化など、多くの企業が対応に苦慮しています。

 

これらの課題をあらかじめ想定し、設計・運用することで、採用後のトラブルや早期離職を抑えることが可能になります。

 

2.文化的理解を深めるためのポイント


異文化コミュニケーションの重要性

外国人労働者が安心して働ける環境を構築するためには、「文化的背景の理解」が不可欠です。
たとえば以下のような違いがあります:

時間感覚:
母国では「ゆるやかな時間管理」が主流でも、日本の職場では時間規律が重要視される場合があります。

・意思表示・上下関係:
遠慮・控えめ・間接表現が普通な文化圏では、自ら意見を述べることが難しいと感じる外国人もいます。
一方、欧米系の文化では明確な意思表示が期待されることがあります。

・語彙・ジェスチャー:
言語が共通でも、ジェスチャーや表現方法で誤解が生じることがあります。

こうした違いを社員側・外国人労働者側双方で意識し、配慮することが職場の調和を保つ鍵となります。

 

異文化研修・受入体制の整備

異文化理解を深めるために、以下のような施策を講じることが有効です:

社員向け異文化研修:
外国人労働者の出身国の文化、ビジネスマナー、コミュニケーションスタイルの違いを学ぶセッションを設ける。

・翻訳・多言語マニュアルの整備:
業務手順、就業規則、職場ルールを外国人労働者向けに翻訳または多言語で提示する。

・メンター制度・バディ制度の導入:
職場内に「外国人労働者の受入経験がある社員」をメンターとして配置し、初期フォローを行う。

・定期フォローアップ:
入職後の定着状況をモニタリングし、早期離職の兆候発生時には支援を展開する。

 

こういった体制づくりは、文化的ギャップを縮め、定着率を高めるために非常に効果的です。

 

3.法的要件を遵守するための基本知識


就労ビザ・在留資格とその種類

外国人労働者を採用する際、まず確認すべきは「適切な在留資格」と「就労可能かどうか」です。
主な在留資格の例を挙げます:

・技術・人文知識・国際業務ビザ:専門職、国際業務に従事する場合
・技能ビザ:特定の技能・職種に従事する場合
・特定技能ビザ:介護、外食、製造など16分野で活用されている比較的新しい制度

これらに加えて、在留期間・更新要件・再入国許可など確認が必要です。

 

雇用契約・労働条件の明示

企業は、外国人労働者にも日本人と同様に適切な雇用契約を交わし、労働条件を明示する義務があります。
特に以下を重視してください:

・賃金:同一価値同一賃金の観点より、日本人と同等の待遇を提供することが求められている
・労働時間・休暇・残業:法定労働時間・割増賃金を守る必要がある
・雇用形態・契約内容・解雇条件など:雇用契約書を外国語版でも提示すると安心感が高まる

 

不法就労の防止

在留資格が適切でないと、不法就労とみなされ、企業・労働者ともに重大なペナルティが課される可能性があります。
企業は「雇用前」「雇用期間中」に在留資格・在留期間・就労範囲の確認を定期的に行うことが望まれます。
雇用主が届出義務を怠った場合、罰則や補助金対象外となるケースがあるため、注意が必要です。

 

4.外国人労働者採用の成功につながる3つの戦略


4.1. コミュニケーション体制の整備

言語・文化の壁を越えて、快適に働ける環境を設計するためには以下が鍵です:

・多言語対応マニュアル/業務手順:入社前・早期にその人が理解できる言語での案内を行う
・翻訳ツール・通訳の活用:初期段階では翻訳ツールや通訳を使うことで誤解を減らす
・定例ミーティング・1-on-1制度:母語または共通語で意見を聞き、安心して働ける場づくり
・相談窓口設置:言語・文化面で困ったことを相談できる窓口を設けておく

 

4.2. キャリア支援と教育プログラムの導入

外国人労働者が長期的に貢献できるよう、キャリアパス・教育支援を用意することが重要です:

・日本語教育・ビジネスマナー研修:特に職場で必要な日本語、業務上のコミュニケーションを強化
・資格取得支援プログラム:在留資格更新や顧客対応力向上のための資格取得支援を提供
・キャリアパスの明示:昇進・役割変更の可能性を明示し、モチベーション維持を図る
・定期的なフォローと評価制度の整備:成果・貢献を可視化し、適切な処遇につなげる

 

4.3. 法律に基づく正確な手続き

戦略を運用に落とし込むためには、法令・制度対応が土台となります:

・在留資格・就労範囲の確認:入社前だけでなく、定期的な確認が望まれる
・「雇い入れ/離職」の届出義務:労働施策総合推進法に基づき、雇用・離職時に届出が必要
・最新情報・法改正のチェック:制度改正が頻繁にあるため、定期的に情報のアップデートが欠かせない
・社内体制の整備:社内で雇用管理責任者を明確にし、外国人労働者対応のルール・マニュアルを整備しておくことが望ましい

 

5.よくある質問(FAQ):外国人労働者採用における疑問と対応


Q1:外国人労働者を雇用する際、どの時点で届出が必要ですか?
A1:外国人を「雇い入れた時」「離職した時」に、雇用保険加入の有無に応じて所定の届出を行う必要があります。

 

Q2:在留資格「特定技能」と「技能実習」の違いは何ですか?
A2:
・「技能実習」は技能習得・移転を目的とし、1号から3号までの区分があり、通常3年間(一定条件で5年間)までの制度です。
・「特定技能」は即戦力として認められた分野(16分野)で働くことができ、在留期間や転職範囲にも一定の条件があります。
 採用時には在留資格・就労範囲を確認し、職務内容が適合しているか確認することが重要です。

 

Q3:外国人労働者の賃金はどうすればよいですか?
A3:外国人労働者であっても、日本人労働者と同等の仕事・同等の価値を提供している場合には、
   賃金等の待遇にも差を設けることなく、「同一価値同一賃金」の観点から配慮することが求められます。

 

Q4:文化的な配慮として、具体的に何ができますか?
A4:
・入社オリエンテーションを母語もしくは理解しやすい言語で実施する。
・先輩社員をメンターとし、定期的に面談・状況確認を実施。
・日本語が十分でない場合は、日本語講座を提供・費用補助する。
・社内のコミュニケーション文化(報連相、時間管理等)を説明し、外国人が理解しやすい形式で文書や多言語表記を整備する。

 

Q5:定着率を高めるためにどうすればよいですか?
A5:
・採用前に「どのような支援があるか」「キャリアパスはどうなるか」を説明することで期待値を設定。
・入社後3〜6ヶ月のフォローを強化し、困りごとを早期に解決。
・社内の多文化理解・受け入れ体制を整備しておくことで、離職防止に効果があります。
・届出制度の遵守・雇用契約の明示・在留資格の確認という基盤をしっかり整えておくことで、
 トラブルリスクを減らし、安心して働ける環境を整備できます。

 

6.まとめ


外国人労働者の採用は、労働力確保・企業成長の観点から今や不可欠な戦略となっています。
とはいえ、文化的な理解や法的・手続き要件を軽視すると、
採用コストが無駄になるだけでなく、早期離職や法令違反によるリスクが発生します。

本記事でご紹介したポイント「文化的理解」「法的要件」「戦略的な体制整備」を踏まえれば、
外国人労働者が定着し、活躍できる職場を実現する可能性が高まります。

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