採用に課題を抱える企業は多く、優秀な人材の確保を経営課題として捉え、解決に向けて積極的に取り組んでいる事例が多く見受けられます。しかし、採用競争は熾烈を極めており、いくら施策を講じても成果に結び付かずお悩みの採用担当者も多いのではないでしょうか。
この記事では、採用においてよくある課題とその解決策を解説します。正しい知識を身につけ、採用力を高めるアクションに取り組んでいきましょう。
1.採用市場の動向
2.採用における課題は主に3種類
3.段階別のよくある採用課題と解決方法
4.採用を成功させるためのポイント
5.効率的な採用活用のためには採用課題の洗い出しが大切
1.採用市場の動向
昨今は売り手市場といわれ、企業にとっては厳しい採用環境が続いています。まずは、新卒・中途それぞれの採用状況をみていきましょう。
新卒での採用状況
リクルートワークス研究所が発表した「第41回 ワークス大卒求人倍率調査(2025年卒)」によると、2025年卒業予定の大学生・大学院生対象の求人倍率は1.75倍で、2024年卒業の1.71倍を上回る数値となっています。また、全国の民間企業の求人数は前年77.3万人だったのに対して今年は79.7万人となっており、企業の旺盛な採用ニーズがみて取れます。
参照:第41回 ワークス大卒求人倍率調査(2025年卒)-リクルートワークス研究所
中途での採用状況
リクルートワークス研究所が発表した「中途採用実態調査」によると、中途採用において「必要な人材を確保できた」と答えた企業は39.2%、「確保できなかった」と答えた企業は58.5%と、過半数以上の企業が必要人材の確保に苦戦している状況がみて取れます。
また、従業員数が多いほど「今後採用する人数が増える」傾向にあります。従業員数が少ない中小企業などは大手企業の採用意欲に押され、人材確保がより困難になる可能性も考えられます。
参照:中途採用実態調査-リクルートワークス研究所
2.採用における課題は主に3種類
新卒・中途に限らず、採用は母集団を増やし選考通過率を高めることで一定の成果をあげられます。つまり、量と質、それぞれの数値を高く保つことが採用成功の鍵となります。
一方、採用がうまくいっていない場合の理由は、段階ごとに大きく以下の3つの課題に集約されるケースがほとんどです。
- 人材要件に叶う適切な応募者が集まらない
- 面接から内定に至る応募者の数が少ない
- 入社後定着しない
まずは母集団形成における課題があり、次に選考通過率が低く内定を出せないという課題、そして最後に戦力として定着しないといった課題があげられます。
それぞれの解決策について、次項で詳しく解説します。
3.段階別のよくある採用課題と解決方法
採用を成功させるためには、それぞれの段階で適切な対応策を打つ必要があります。いずれかの段階だけを改善しても本質的な採用力向上には繋がりづらく、前述の3つの課題すべてに向き合う必要があります。
募集までの採用課題
応募者が集まらない
1つ目は、そもそも応募者が集まらないという課題です。数名の応募しかないような状況では、そのなかから自社に見合った人材を探すのは困難でしょう。
要因として考えられるのは、自社の露出度の低さです。採用活動を行なっていることがそもそも応募者に知られていないために応募者数の確保に苦戦するケースが多々見受けられます。求人メディアを活用する、採用イベントや説明会などに出展するなど、応募者の目に触れる機会を増やす必要があります。
応募者が集まりすぎている
2つ目は、応募者が集まりすぎているという課題です。贅沢な課題にも思えますが、実際そうではありません。
応募者が集まりすぎると、採用における業務の工数が増加します。応募者すべてが求める人材ではない可能性も高く、いたずらに業務が増えると、本来採用に向けて注力すべき応募者に対する適切なフォローができなくなります。その結果、適切な採用が果たせなかったといった事例も散見されます。
応募者の目に触れる機会をつくりだすアクションは必要ですが、無闇に自社の認知度を高めすぎると逆効果になる可能性もあります。どのチャネルを用いて自社の認知度を高めて適切な応募者数を獲得するか、採用戦略を練る際に慎重に吟味しておく必要があります。
求める人材からの応募がこない
3つ目は、求める人材からの応募がこないという課題です。一定の応募はあるものの、いずれも面接で内定に至るような人材ではないケースがあります。
こうしたケースでは、発信しているメッセージが正しくなかったり、そもそも活用しているチャネルで求める人材にリーチできていなかったり、ターゲティングを誤っている可能性も考えられます。自社が求める人材とは何かを改めて定義し、該当する人材にアプローチするための最適な方法は何かを考え、実行する必要があります。
選考での採用課題
人材の見極めが難しい
1つ目は、人材の見極めが困難という課題です。人材要件を定義しても、面接のなかでどのようにしてそれを確認すればいいのかわからず、面接官ごとに評価にばらつきがみられ、評価が標準化されていないケースがあります。
定義した人材要件を確かめるための質問や模範となる解答例など、採用に関与する全員が共通認識を持てないと、見極めポイントが曖昧になります。その結果、どのような人を採用すればいいかわからない状態となり、望むような人材が採用できない結果に繋がる可能性が高くなるでしょう。
どのようなスキル・経験を持つ人材が必要なのか、なぜそのスキル・経験が必要なのか、入社後に任せる仕事は何か、それぞれを可能な限り具体的に定義する必要があります。
面接辞退が多い
2つ目は、面接辞退が多いという課題です。面接辞退には大きく2つの理由が挙げられます。1つは、面接プロセスにおいて「この会社で働きたい」と応募者が感じる環境を醸成できなかった場合、もう1つは、他社を併願しており先にそちらで内定が出た場合です。
応募者がどのようなキャリアを見据え、自社としてどのような機会が提供できるのかを面接の場で丁寧に伝えられないと、辞退リスクは高まります。面接は企業が応募者を一方的に評価する場ではなく、応募者からも評価される双方向のコミュニケーションの場である認識を持つことが大切です。
また、応募者が他社を併願している場合は、選考スピードを意識することも辞退防止には重要です。例えば、他社が最終面接を調整している一方、自社はこれから一次面接をするといった場合は、一次面接の時間を少し延長して二次面接で確認する予定だった内容を盛り込むなど、柔軟に対応しましょう。
その場その場で適切な対応・コミュニケーションを取ることが、応募者の意向を高める最善の方法となります。
内定辞退が多い
3つ目は、内定辞退が多いという課題です。会社として「ぜひ来てほしい」と思っても応募者が意思決定をしてくれないといったケースは、採用活動において必ずといっていいほど起こり得る事象です。
内定辞退の理由としては、より良い雇用条件が提示された企業へ意思決定した場合(現職が転職防止のために現在の雇用条件を見直す場合も含む)や、他社の面接官の印象が良く「この人と一緒に働いてみたい」と感じるケースなどがあります。
大切なのは、これまでの面接プロセスのなかで応募者と密なコミュニケーションが取れているかどうかです。入社後のイメージをしっかり持ってもらえているか、提示した条件は応募者の希望に沿っているか、期待値を伝えられているか、そして何より「あなたにぜひ来てほしい」という気持ちをしっかり伝えられているか。年収面などで多少希望に沿えていない場合でも、今後のキャリアが充実する可能性や一緒に働くメンバーの魅力が正しく伝われば、自社に意思決定してもらえる可能性は高まります。
応募者が入社してくれるのを待つのではなく、入社してもらうために積極的に自社から働きかける姿勢が、内定辞退率を低下させる最善の方法だといえるでしょう。
入社後の採用課題
早期退職が多く定着率が低い
多大な時間と費用をかけて採用をしても早期退職が多く定着率が低い場合は、面接時のコミュニケーションに課題があるかもしれません。
リクナビNEXTの調べによると、転職・退職理由は「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」「労働時間・環境が不満だった」「同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった」がトップ3となっています。
参照:転職理由と退職理由の本音ランキングBest10-リクナビNEXT
早期退職が続いている場合は、社員の退職理由を可能な限りクリアにし、面接のなかで懸念要素を払拭するよう心掛けることが大切です。面接のなかで、具体的な仕事の内容や働くメンバーとの交流機会、上司との顔合わせなどをしっかり行なっていれば、これらの理由で転職するリスクを低減させられるかもしれません。
一方、期待していたほどの活躍が見られない場合、定義している人材要件に問題があるか、もしくは面接における評価プロセスが機能していない場合が考えられます。
活躍している社員のバックグラウンドや、どのようなスキルを持ち合わせているかを改めてヒアリングして人材要件を修正する、面接官の目線を統一するための面接トレーニングを行うなど、面接プロセスの抜本的な見直しに着手する必要があるでしょう。
4.採用を成功させるためのポイント
続いて、採用を成功させるために大切な5つのポイントについて解説します。
採用したい人材を明確にする
1つ目は、採用したい人材を明確にすることです。なぜ採用するのか、どのような人材が必要なのか、任せる仕事は何かなどについて、採用に関わる全員が同じ認識を持つ必要があります。もし認識にずれがある場合、入社後のパフォーマンスに影響が出たり、応募者の意向醸成ができず面接辞退に繋がったりする恐れがあります。
採用したい人材を明確にすることは、採用成功に向けて一番初めに取り組むべきアクションです。
採用フローを見直す
2つ目は、採用フローを見直すことです。面接ごとに応募者の何を確認するのか、何を伝えて意向醸成を図るのかをクリアにし、採用フローを設計する必要があります。例えば、一次面接で応募者のスキル・経験を確認し、二次面接では他メンバーとの相性やカルチャーフィットを確かめるなど、明確な目的を設定しましょう。
また、面接回数を重ねるにつれて応募者の自社に対する期待が高まっていくような設計が理想です。一次面接でスキル・経験が活かせる環境であることを伝えたのなら、二次面接では今後中長期のキャリアとしてどのような可能性を提供できるかを伝えるなど、単に自社が応募者を判断する場ではなく、応募者に興味を持ってもらえるようなコミュニケーションを段階的に仕掛けていくようにすることが大切です。
応募者に伝える自社の魅力を考える
3つ目は、応募者に伝えるべき自社の魅力を考えることです。他社にはない自社のユニークなポイントを明確にし、適切に訴求しましょう。求人に掲載する魅力と面接内で伝える魅力、それぞれを定義し、応募者との接点が増えるにつれて、より具体的な内容が伝わるような流れをつくるのが理想です。
内定者のフォロー体制を見直す
4つ目は、内定者フォローの体制を見直すことです。応募者にとって、内定後の意思決定はこれまでの面接の延長線上では決してなく、自身のキャリアをトレードオフするに値するかどうかを判断する非常に大切な局面です。
企業側には、内定者が知りたい・クリアにしたいことに丁寧に向き合い、必要な情報を提供する丁寧なコミュニケーションが求められます。必要に応じて会食を設定してカジュアルに話せる場を用意する、オフィス見学の提案をするなど、常に先回りして内定者の意向をさらに高めるための施策を戦略的に打っていきましょう。
人事採用と現場が一体となって、一人の内定者に向き合うフォロー体制を敷くことが、採用成功の鍵です。「日々の採用業務が忙しく内定者フォローに適切な時間を捻出できない」といった事態は避けましょう。
採用支援ツール・採用代行サービスの活用
5つ目は、採用支援ツール・採用代行サービスを活用することです。採用業務には、例えば面接日程調整など、ある程度オペレーション的に管理・対応する業務も存在します。ここに工数を割きすぎると、本来取り組むべき採用戦略の設計、改善施策の検討・実行、応募者とのコミュニケーションなどのコア業務に影響が出てしまうかもしれません。
採用支援ツールや採用代行サービスを有効に活用すれば、応募者の採用ステータスの把握や評価入力の標準化、日程調整などの採用業務を効率化でき、工数の捻出が可能になります。採用を成功させるための施策として非常に有効です。
5.効率的な採用活用のためには採用課題の洗い出しが大切
採用活動は、常にPDCAを回しながら精度を高めていく必要があります。現在の課題は何か、解決するためにはどのような施策が必要なのかを考えながら、有効な手法をスピーディーに実行していかなければなりません。
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